不動産

代償分割で現金がないときは?円滑に解決する5つの対処法

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相続財産は現金のように分割できるものだけとは限りません。「めぼしい相続財産が不動産しかない」というケースもあり得るでしょう。

そのような場合、不動産を取得する相続人が他の共同相続人に対して、「代償」として現金を支払う遺産分割の方法を取るのが一般的。

これが「代償分割」です。

とはいえ、不動産を相続する人が、必ずしも代償金を支払えるだけの現金を持っているとは限らないでしょう。

今回は代償分割に焦点を当て、代償とする現金がない場合の対処法について詳しく解説していきます。

代償分割で現金がないときの対処法

親が亡くなり、長男である私と次男で遺産相続の話をしなければなりません。相続財産は自宅以外にほんの少しの預貯金しかなく、法定相続分で分割するのが難しい状況です。

できれば私が実家を相続したいのですが、どうすれば良いか相談させてください。

自宅を相続する代わりに共同相続人に代償をする「代償分割」という方法ですね。

原則としては現金ですが、それができない場合にもいくつかの方法が考えられます。

分割支払いにする

代償分割では現金一括払いが理想的ではありますが、共同相続人の合意があれば分割払いとすることも可能です。

ただし、支払い方法や期日についてしっかりと話し合ったうえで、できるだけトラブルの芽を摘んでおくことを心がけましょう。

代償金を分割払いにする旨や支払期日に関して、遺産分割協議書を作成する際に明記しておくことも大切です。

他の資産で現金代わりにする

代償は必ずしも現金でなければならないという訳ではありません。不動産や未公開株式などの資産があれば、現金の代替として検討することができます。

認められる事例

例えば被相続人が遺した土地・建物を相続する代わりに、自身が所有する土地を共同相続人に譲るようなケースが該当します。

ただし現金とは異なり、代替資産の評価に関しても慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

金融機関で借りる

分割払いに相手が合意してくれなければ、ローンを利用して資金調達する方法が現実的です。

相続財産が不動産であれば、不動産担保ローンの利用が想定されます。金融機関によっては不動産投資ローンが流用できるケースもあるでしょう。

この方法であれば一括で代償金を支払うことができるため、共同相続人の合意が得られやすいというメリットがあります。

その一方で抵当権設定登記費用や金融機関に支払う事務手数料などの諸費用、金利負担などが発生することを認識しておく必要があります。

注意点

また、不動産担保ローンは一般的な住宅ローンに比べて高金利であることにも注意が必要です。

現物分割・換価分割にする

いずれの方法でも代償分割が難しければ、相続財産自体を分割するという方法も考えられます。

一つは相続財産自体を物理的に分割する「現物分割」、例えば土地であれば分筆して相続する方法です。

もう一つは資産を売却して現金化し、分割割合に応じて配分する方法で、「換価分割」と呼ばれます。

いずれの方法も代償分割とは異なりますが、選択肢の一つとして検討することも必要でしょう。

生命保険で生前対策する

被相続人の生前に対策することができるのであれば、生命保険を利用するのも有効な方法です。

生命保険は民法上の相続財産ではありませんが、死亡を契機として資産を受け取ることができる仕組みであるため、不動産のような「分割できない財産」を取得できない相続人を受取人とすることで、公平な遺産分割を実現することができます。

また、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」であるため、税制上の公平性も保つことができます。

代償分割における金額の決め方は?

分割払いやローンの利用を検討するのが現実的な気がします。その金額はどのように決めればよいのでしょう?

近隣の不動産会社や不動産鑑定士に査定を依頼する方法などが考えられますが、最も大切なのは相続人全員が評価額に納得することだといえるでしょう。

不動産の評価額による

相続で代償分割の必要性が生じた際、まずは不動産の評価額を確認することが必要です。

不動産の価値は取得時ではなく「相続開始時の時価」が評価額となります。

不動産鑑定士に依頼するなど、相続人全員が納得できる方法で評価額を求めることが大切といえるでしょう。

不動産の評価方法は複数ある

同一の不動産の査定を複数の会社に依頼した場合でも、査定額には差が生じるのが一般的です。なぜならば、不動産の評価方法は一つだけではないからです。

近隣での取引事例や路線価などに着目した査定手法や再調達価格から減価償却分を差し引く方法、その不動産が生み出す収益に着目した査定手法など、採用する評価方法によって算出される価格は異なります。

当事者の合意が必要になる

遺産分割協議の場で最も重要なポイントは「当事者間の合意」です。

もちろん当事者間では円満に解決できず、調停の場で第三者を介した話し合いや審判などの必要性が生じるケースもありえますが、まずは遺産分割協議を円滑に進められるように丁寧に話し合いを進めていくことが最も大切なことだといえるでしょう。

不動産の評価額を例に挙げても、代償金を支払う側からしたら低い方が、受け取る側にとっては高い方が好ましい結果と言えるため、そこでも利害の対立が発生してしまいます。

評価額を決める際には、採用する査定手法に関しても十分な話し合いが必要だと認識しておくべきでしょう。

現金がないときの代償分割の注意点

しっかりと話し合って、お互いに納得できる方法を探す必要があるのですね。

単純に相続財産を分割するケース以上に、代償分割は「利害対立の発生要因が多い」ともいえます。

できるだけトラブルを防ぐためにも、いくつかの注意点を押さえておきましょう。

分割払いは滞納リスクに注意する

分割払いで代償金を受け取る場合には、滞納が発生するリスクを念頭に置いておく必要があります。

相続から月日が経過し、相続した不動産を所有していることが当たり前の感覚になってくると、ともすれば支払いを滞納する可能性も否めません。

親族という間柄ではなおさらともいえます。

そのようなリスクを考慮し、「支払いが完了するまでは共有名義で登記する」などの対策を講じておくのも良いでしょう。

共有であれば不動産の活用や処分の際に合意が必要となるため、「代償金の支払いを終えなければ自由に活用や処分ができない」という一定の制限を加えることができます。

譲渡所得に注意する

現金の代わりに不動産などを代償として渡す場合には、譲渡所得税に注意しましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税は「売却や交換などによって利益が出たとき」に課される税金です。

代償として譲り渡す際も、評価額から取得時の価格や譲渡費用を差し引いて利益が生じている場合に課税対象とされます。

不動産だけでなく、未公開株などを代償とする場合にも同様に課税の可能性があることを覚えておきましょう。

遺産分割協議書にも記載する

代償分割の際には、遺産分割協議書に代償分割する旨や金額などを記載しておくことが大切です。

遺産分割協議書に記載をせずに代償金を支払った場合、お金の受け渡しの根拠が分かりません。このため代償金であるにも関わらず、贈与とみなされるリスクが発生します。

相続財産の代償としての支払いである旨や金額、支払い方法などを含め、詳細に記載しておきましょう。

建物の取得費から減価償却費を控除する

建物は土地と異なり、年数の経過により価値が減少していくと考えられています。

相続財産が建物である場合には、年数の経過による減価償却に注意しましょう。代償として渡す財産が建物である場合も同様です。

なお、譲渡所得税が発生する場合には、建物の取得費から減価償却費を控除することができることも覚えておきましょう。

減価償却費は以下の計算式で求めることができます。

取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数=減価償却費

償却率は構造によって異なるため、詳細は「国税庁のHP」を確認しておきましょう。

代償分割に贈与税がかかる場合もある

代償分割で財産を取得した場合、原則として贈与税が課税されることはありません。

しかし、遺産分割協議書に記載しなかった場合以外にも、取得した相続財産を上回る代償金を支払った場合には、差額分が贈与とみなされる可能性が高いといえます。

また、生命保険金による生前対策を行った場合も要注意です。生命保険金は現金で支払われるため分割が容易な反面、相続財産ではないので代償分割の対象とはされません。

保険金を利用して共同相続人の財産を調整するのは有効な手法ですが、保険金を分割した場合には贈与税の課税対象となるデメリットがあることも覚えておきましょう。

代償分割に関するよくある質問

おおむね理解できた気がします。ほかに注意すべき項目はありますか?

では代償分割に関するよくある質問を確認して、さらにトラブルのリスクを軽減させましょう。

Q
代償分割の支払い期限はどうすればよい?

代償分割の支払い期限も相続人間の合意によって決める性質のものであるため、特に目安や決まりはありません。税法上も期限が定められていないため、「長い期間が経過したため贈与とみなされる」などのリスクはないと考えてよいでしょう。

特に代償を現金で用意できないケースでは、資金調達や支払いの方法などに応じて、慎重に話し合いで決める必要があります。

重要なのは、支払い能力を考慮した期限を設定することと、前述した共有名義での登記などで「支払いを担保する手段」を講じておくことです。

Q
代償分割で分割払いの場合に利息はどうすればよい?

分割払いの場合、利息についても当事者間でしっかりと話し合って決めることが大切です。

支払う側は期日が到来するまで支払いを猶予してもらう「期限の利益」を得ることになり、受け取る側は滞納リスクなどを被ることを考慮すると、円滑な合意形成のためには相応の利息を検討することも必要といえるでしょう。

もちろん利息も合意によって決めるものであるため、無利息でもかまいません。

設定するのであれば、民事法定利率の年3%などが目安の一つとなるでしょう。

現金がない代償分割まとめ 

相続で生じる問題はとても多様です。「資産が簡単に分割できない」というケースも珍しくはありません。

代償分割はそのような場面で非常に有効な方法ですが、「代償金の原資が足りない」という事態も想定しておく必要があるでしょう。

前述した通り、代償分割は当事者間で利害の対立となりうるポイントが多く、手続きには専門的な知識も欠かせません。

相続人同士でのトラブルを招くことがないよう、弁護士や税理士などの専門家を交えてしっかりと話し合いを進めていくことをおすすめします。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
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