【仮想通貨の相続】トラブルを防ぐ手続きと評価方法を解説!
近年では、「新たな投資先の一つ」として認知度が高まってきたビットコインなどの仮想通貨。
とはいえ株式や外貨ほど一般に普及しているとはいえず、仮想通貨に関する知識に精通している人はむしろ少数派というのが現状ではないでしょうか。
「仮想通貨を保有しているけれど、相続の際にはどのように扱えば良いのだろうか?」
こんな疑問を持つ人も少なくないはずです。
もちろん仮想通貨も金融資産の一種ですから、相続が発生すれば相続税の課税対象とされます。
今回の記事では「仮想通貨の相続」に焦点を当て、トラブル対策や資産価値の評価の方法を詳しく解説していきます!
仮想通貨は相続税の課税対象になる
先日亡くなった父が「仮想通貨に投資をしている」という話を聞いていたのですが、それがどこにあるのか、どのくらいの額なのかも全く分かりません。
仮想通貨を無視して相続手続きをしても良いのでしょうか?
仮想通貨も金融資産なので、相続税の課税対象です。保有している通貨や数量を確認して、相続財産に含めなければなりません。
仮想通貨とは
仮想通貨とは、インターネットを介して取引が可能な「財産的価値を持つ電子データ」です。法律上は「暗号資産」という名称で呼ばれます。
日本円やアメリカドルのように国や中央銀行が発行している一般的な通貨(法定通貨)とは異なるものの、これらと相互に交換が可能で、「代金の支払い」などの決済にも使用できることから、金融資産として扱われるのです。
資金決済法で通貨に近い性質を持つ
少し乱暴な説明にはなりますが、相続財産として考えた場合には「FX口座に保有している外貨」などに近い性質のものと考えれば分かりやすいでしょう。
もちろん外貨は法定通貨なので根本的な性格は異なりますが、「財産価値を持つ金融資産を電子データとして保有している」という意味で似通った形態といえます。
仮想通貨の相続税評価方法は?
そもそも仮想通貨がよく分かっていなかったのですが、なんとなくイメージはできました。
では、仮想通貨はどうやって相続財産に計上すればよいのでしょう?
株などのように特定の評価方法が定められていないのです。基本的には相続開始時の時価で判断すると考えれば良いでしょう。
専用の評価方法が定められていない
相続財産の中でも、土地や株式など特定の資産に関しては、決められた評価方法が存在します。しかし仮想通貨には、専用の評価方法が定められていません。
このため評価方法が定められていない他の固定資産などと同様に、「評価方法の定めがない財産」の評価の考え方(当該財産の取得の時における時価)に基づいて評価することになります。
相続開始日の時価で評価される
一般的な取引所などで扱われている仮想通貨は、相続開始日の取引価格と保有数量で評価されます。
同日に売却した場合の価格が相続時の評価額と判断されるため、購入価格と売却価格に差異がある場合は売却価格を採用すると考えれば良いでしょう。
仮想通貨取引所に残高証明書の発行を求めることで、相続開始日の取引価格と保有数量を確認することができます。
しかし、仮想通貨は一般的に取引されるものだけとは限りません。
このような「活発な市場が存在しない仮想通貨」については、取引事例や精通者の意見をもとに個別に判断するとしています。
具体的な仮想通貨の相続手続き
実際に相続をするとなると、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
金融庁に登録済みの一般的な仮想通貨取引所であれば、ネット銀行やネット証券などに準じた手続きを想定しておけば良いでしょう。
被相続人が仮想通貨を保有していなかったか調べる
被相続人が仮想通貨を保有していたか否かを確認する作業が、実は最も重要かつ困難といっても過言ではありません。
仮想通貨は銀行預金のように通帳を発行するわけではありませんから、スマートフォンやパソコンのアプリなどから手掛かりを得る方法が有力です。
メールの履歴や郵便物などから分かるケースもあるでしょう。
利益が上がっていれば確定申告をしている可能性がありますから、過去の確定申告書をチェックすることも大切です。
取引所に相続発生を連絡する
被相続人が仮想通貨を保有していたことが確認できたら、口座を開設している取引所に相続の発生を連絡しましょう。
預金口座などと同様、遺産分割が確定するまで口座は凍結されます。
相続手続きの方法や必要書類は取引所によって多少異なりますから、連絡の際に確認しておくと良いでしょう。
必要書類を送る
仮想通貨の相続手続きでは、銀行口座にある預金の相続などと同様に、相続が発生した事実や相続人が分かる書類などを求められるのが一般的です。
想定される必要書類を以下に列記します。
このほか、相続人の本人確認書類や印鑑証明書などが必要となるでしょう。
つまり預金などと同様に、被相続人が保有していた仮想通貨をどのように相続するかが確定して初めて、払い戻しなどの手続きを取ることができるのです。
払い戻し手続きが行われる
仮想通貨の相続では、仮想通貨を売却して日本円で払い戻す方法と、仮想通貨のまま代表相続人の口座に移す方法などが考えられます。
利用している取引所によってこれらの手続きも異なりますから、相続発生の連絡をした際に対応を確認しておくと良いでしょう。
仮想通貨のまま相続人の口座に移す場合には、同一の取引所で口座を開設しておく必要などが生じます。
仮想通貨の相続で注意するポイント
預金口座や証券口座などの相続と似たような手続きが必要になるのですね。このほかに注意すべきポイントなどはありますか?
確かに手続き自体は似ているともいえるのですが、「銀行や証券会社よりも分かりにくい」という点に注意が必要です!
スマホ・PCはチェックできるように処分しない
仮想通貨を管理するウォレットには、スマートフォンやパソコンからアクセスする必要があります。
このため仮想通貨が相続財産に含まれている可能性がある場合には、これらの機器を処分せずに適切な状態で保存しておくことが不可欠です。
仮想通貨に限らず、ネット証券やネット銀行などを利用していることも考えられるでしょう。
相続財産を確定するために必要なさまざまな情報は、故人が使用していたスマホやPCなどに保存されているケースが多いといえます。
海外取引所はプライベートキー(秘密鍵)が必要になる
海外取引所のすべてという訳ではありませんが、利用している業者によってはプライベートキー(秘密鍵)が必要になる可能性があります。
国内で一般的に利用されている取引所では、この二つの鍵を取引所が管理しているため、正当な相続人であることを示すことで被相続人が保有していた暗号資産を引き継ぐことができます。
それに対して秘密鍵を本人が管理している海外取引所では、秘密鍵が分からなければ引き継ぐことができません。
取引所自体がそれを知り得ないため、技術的に復元することができないのです。
仮想通貨の相続に関するよくある質問
仮想通貨はかなり普及してきたとはいえ、相続に関してはまだまだ一般的な事例とまではいえません。
よくある質問をチェックして、より理解を深めておきましょう。
「パスワードが分からない」などの理由で仮想通貨の資産額が特定できなかったとしても、それだけを除外して相続手続きを進めることはできません。
相続放棄は、あくまでも「すべての資産や負債を放棄する」ことを意味しており、特定の財産だけを指定して相続財産から除外することや相続放棄をすることはできないのです。
相続のためには、仮想通貨を含めてすべての資産を確定しなければなりません。
個人間取引やマイニングなどによって、被相続人が「取引所を介さない仮想通貨」を保有している場合もあります。
このケースでも相続財産には変わりないため、資産を特定しなければなりません。
しかし前述した通り、公開鍵と秘密鍵がなければ暗号化された資産を第三者が特定するのは技術的に不可能といえるでしょう。
とはいえ被相続人もこれらの鍵を暗記しているとは考えにくく、何らかの方法で管理しているはずです。
仮想通貨の相続に詳しい専門家に相談して、適切な特定方法を検討していきましょう。
仮想通貨の相続まとめ
仮想通貨の相続で想定される最大の困難は、おそらく「被相続人の保有状況が分からない」ということでしょう。
ネット銀行やネット証券なども把握がもれないように注意が必要ですが、仮想通貨は預金や株式ほど広く普及しているとはいえず、相続人が仮想通貨に関する知識を待っていないケースも想定されます。
とはいえ相続手続きでは、仮想通貨も含めた相続財産をすべて把握することが不可欠です。不安があるときは専門家に相談することをおすすめします。