相続税

特別縁故者とは?相続税申告における手続きと注意点まとめ

hdxsk630@yahoo.co.jp

亡くなった人に相続人がいなければ、遺産は「国庫に帰属する」と定められています。
では、法律上の手続きを経ていない事実婚のケースはどうなるのでしょう?

内縁関係の夫婦には相続権がないため、何もしなければ相続財産を受け取ることができず国のものになってしまいます。

しかし、これではあまりにも理不尽です!

特別縁故者とは、「相続人ではないけれど、故人と特別な関係がある人には遺産を分けましょう」という制度。

内縁関係の家族などは、特別縁故者に当たる可能性が高い関係といえるでしょう。

そこで今回の記事では、特別縁故者の財産分与の仕組みと手続きの流れや注意点について、詳しく解説していきます。

特別縁故者とは

相続人でなくても、亡くなった人との関係性が認められれば遺産を受け取ることができると聞きました。

具体的にはどのような制度なのでしょう?

故人との縁が深かったと裁判所に認められた人を「特別縁故者」とする制度です。

相続人がいない場合に限って、遺産を受け取ることができます。

相続人がいない方の財産を受け取れる人

特別縁故者

特別縁故者とは、相続人がいない場合に故人の財産を受け取れる人のことを指します。

一般的に相続人となるのは故人の配偶者や子供など、民法で定められた法定相続人です。つまり内縁(事実婚)の配偶者などは法律上の相続人には当たりません。

法定相続人がいない場合や全員が相続放棄をした場合などは、相続財産は国庫に帰属するとされており、すべて国のものとなってしまいます。

相続人以外が遺産を受け取るには、一般的に故人が遺言書で遺贈の意思を示していることなどが必要ですが、特別縁故者と認められた人は相続人がいない場合に限って財産を受け取ることができるのです。

特別縁故者が認められる状況

「特別親しい関係にあった」だけでは特別縁故者とはみなされません。

遺産を受け取るには家庭裁判所に対して申立てを行い、条件に当てはまることが裁判所から認められなければならないのです。

特別縁故者として認められる人の要件は?

裁判所に対する申立てと聞くと、かなりハードルが高いような気がしてしまいます。

実際にはどのような人が特別縁故者として認められるのでしょうか?

特別縁故者と認められるには、家族同然に生活していた場合や、故人に献身的なお世話をした場合など、いくつかの類型があります。

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

被相続人と生計を同じくしていた

「生計を同じくしていた」とは、故人の収入によって家族同然に暮らしていたことなどを示した表現です。

例えば結婚した相手に連れ子がいた場合、夫婦が婚姻届けを提出して法律上の配偶者となっていても、連れ子が自動的に法律上の子となるわけではありません。

養子縁組などの手続きを行っていなければ、たとえ同居して実の親子のように暮らしていたとしても、相続人にはなれないのです。

このようなケースでは、特別縁故者と認められる可能性が高いといえます。

被相続人の療養看護に努めた

故人の生前、献身的に介護をしていた人など「親身になって身の回りの世話をした人物」が該当します。

この場合には血縁関係や家族関係などは問いません。他人であっても認められる可能性がある項目です。

看護師のように単に仕事として看護をしていた場合などは基本的に認められませんが、報酬以上に献身的な貢献をしていたことで特別に認められた事例も存在します。

その他被相続人と特別の縁故があった

上記の2項目以外でも「被相続人が財産を譲りたいと考えるくらいの深い関りがあった」と考えられる場合には、特別縁故者と認められる可能性があります。

生前の生活の中で深いつながりを持っていたことや精神的な支えとなっていたことなど、認められた事例はさまざまです。

故人との特別な縁故があったことを示す記録、例えば日記や手紙などがある場合には認められやすくなるようです。

法人が特別縁故者になれる場合もある

また個人だけに留まらず、法人や団体などが特別縁故者と認められたケースもあります。

例えば生前から特定の学校法人に対して継続して私財を投じて金銭的な支援をしていた場合などは、「その法人に対して故人が遺産を譲りたいと考えるだろう」という合理的な根拠になり得るでしょう。

特別縁故者が遺産を受け取る流れ

裁判所に対する特別縁故者の申立ては、具体的にはどのような手続きを踏むのでしょうか?

特別縁故者が財産分与を受けることができるケースは「相続人がいない」というのがポイントとなります。

このため、相続人に代わって故人の財産を管理する人が必要になるほか、本当に相続人がいないのかを確認する手続きが必要になります。

申立てから認定までは1年以上の長い期間を要することも知っておきましょう。

家庭裁判所への申立てが必要

相続人がいない状態で相続が発生したからといって、特別な関係のある人が自動的に特別縁故者になるわけではありません。

家庭裁判所に対して申立てを行い、その関係性が認められることで初めて特別縁故者となるのです。

相続財産管理人選任の申立て

相続人がいない場合、相続財産の管理や財産の処分を行う「相続財産管理人」を選任しなければなりません。

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、相続財産管理人選任の申立てをすることが特別縁故者が財産を受け取るための第一歩です。

あわせて読みたい
相続財産管理人に支払う予納金とは?目安は?払えない場合の対処法
相続財産管理人に支払う予納金とは?目安は?払えない場合の対処法

相続財産管理人を選任

相続財産管理人は、家庭裁判所が申立ての内容や相続財産の内訳などに応じて選任します。

選任の基準は特に設けておらず「生前の被相続人との関係や相続財産に関する利害関係の有無などを考慮する」としていますが、専門的な知識を持つ弁護士などが選ばれることが一般的です。

相続財産管理人を選任した後には、家庭裁判所がその旨を官報で公告することになっています。

債権者や受遺者の清算

選任された相続財産管理人は、まず相続財産を調査して財産目録を作成します。

相続財産は現金や不動産などの資産だけとは限りません。貸付金の債権がある場合や、逆に負債がある場合もあるでしょう。

すでに分かっている負債以外にも債権者がいるかもしれません。

このため相続財産管理人は債権者や受遺者(遺贈を受けた人)に対し請求の申出をする旨を公告することが義務付けられています。

これらの手続きを経たうえで、債権者や受遺者に対して清算を行います。

相続人の捜索

債権者や受遺者への清算後、家庭裁判所が相続人の捜索を行います。

6ヶ月以上の期間を定め「相続人がいれば期間内に申し出るように」との旨を官報で公告し、期間内に申出がなければ相続人なしと確定します。

特別縁故者への財産分与審判の申立て

特別縁故者は、相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内に、財産分与の審判を求める申立てをする必要があります。

相続財産管理人は家庭裁判所の審判に従い、遺産の中から特別縁故者に対して財産を分与するのです。

特別縁故者の相続税に関する注意点

特別縁故者として財産分与を受ける場合、通常の相続とは税金の面で異なるポイントが存在します!

特に注意を要する点を見ていきましょう。

申告期限の起算日が異なる

特別縁故者が遺産を受け取った場合にも相続税がかかります。このため期限内に申告することが必要です。

特別縁故者の場合の相続税の申告期限は「財産分与があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と定められており、その期間に納税までも済ませなければなりません。

法定相続人の申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」ですから、起算日が違うことを覚えておきましょう。

相続税は2割増しになる

相続税法では、相続人が配偶者もしくは1親等以外の場合、相続税が2割加算されるルールがあります。

兄弟が相続人となった場合などは、配偶者や子どもが相続する場合の2割増しの相続税がかかるのです。

特別縁故者は配偶者にも1親等にも該当しませんから、「相続税2割増し」の対象となります。

基礎控除が少なくなる

相続税には基礎控除額があり、特別縁故者が財産を受け取る場合にも基礎控除が適用されます。

しかし、相続人が財産を受け取る場合よりも控除額が少なくなることに注意しましょう。

相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数で計算されます。

特別縁故者が相続する場合は「法定相続人がいないこと」が条件になりますから、3000万円の控除だけが適用されることになります。

適用できない控除・特例がある

配偶者が遺産を相続する場合や不動産を相続する場合などには、一定の条件を満たすことで相続税が大きく減額されるさまざまな特例が存在します。

しかし、特別縁故者が遺産を受け取る場合、相続税法に定められた多くの特例が適用されません。

配偶者控除を例に挙げれば、配偶者であれば1億6,000万円までであれば相続税が課税されない上、それを超えても法定相続分までは非課税です。

しかし、事実婚という関係の場合にはこの特例が適用されず、基礎控除額3,000万円を超える財産には課税されてしまいます。

このほかにも小規模宅地等の特例や相次相続控除など、多くの特例が適用されないため、通常の相続に比べて税額が大きくなりやすいことを覚えておきましょう。

財産に不動産が含まれる場合は不動産取得税がかかる

遺産の中に不動産が含まれる場合はさらに注意が必要!

小規模宅地等の特例が適用されないため評価額が大きくなる可能性が高いうえに、不動産取得税の課税対象にもなるからです。

相続によって不動産を取得した場合は不動産取得税は課されませんが、特別縁故者が取得した場合には「遺贈」という扱いとなるため、課税対象となってしまいます。

特別縁故者に関するよくある質問

ここまでで手続きの流れや注意点を説明してきましたが、さらによくある質問をチェックして理解を深めておきましょう!

Q
いとこは特別縁故者になれる?

いとこに相続権はありませんが、条件を満たし裁判所が認めれば特別縁故者になれる可能性は十分にあります。特別縁故者になれる要件には、血縁関係などの規定はないからです。

ただし、いとこは4親等の血族にあたるため、特別寄与料を請求できる立場であるともいえます。

特別寄与料は、生前の被相続人の介護などに努めた親族が請求できるお金のこと。

特別縁故者の根拠が「献身的に介護したこと」などであるのなら、手続きのハードルが高い特別縁故者よりも、特別寄与料の制度を利用したほうがよいかもしれません。

Q
特別縁故者が認められないことってある?

特別縁故者として認められるか否かは、生前の故人との関係性の深さや故人に対する貢献の度合いなどによって判断されます。このため必ずしも認められるとは限りません。

また特別縁故者と認められた場合でも、金額は遺産相続の分割割合とは大きく異なり、故人とのつながりの度合いなどから裁判所が判断します。

たとえ分与を受ける人が1人だけであったとしても、必ずしも全額を受け取れるわけではありません。

特別縁故者の相続税まとめ

法定相続人にあたらない場合でも、特定の要件を満たせば特別縁故者として遺産を受け取ることができることが分かったと思います。

ただ、手続きには時間がかかるうえ、通常の相続や遺贈の場合よりも相続税の面でも不利になる可能性が否めません。

遺産を残したい人に確実に受け取ってもらうためには、遺言書などでその意思を示しておくのがよいでしょう。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
記事URLをコピーしました