相続税の非課税財産とは?税金を抑えるポイントも解説します!
相続税法には、税の負担を軽くするためのさまざまな特例制度が設けられています。
非課税財産もその一つ。相続財産のうち特定の資産に関しては、相続税が課されない仕組みが存在するのです。
今回の記事では、相続税対策を考える上で欠かせない「非課税財産」について、詳しく解説していきます。
相続税が非課税になる財産とは?
そろそろ私も相続について考えなければならないと思っているんですが、たまたま知人から「相続財産の中でも非課税となるものがある」なんていう話を聞きました。
具体的にはどんな財産のことでしょうか?
代表的なものは墓地や仏壇などですね。墓地は非課税財産とされていて、相続税が課されないことになっています。
ほかにも生命保険の非課税枠などさまざまな非課税財産がありますから、一つ一つ見ていきましょう。
墓地や仏壇など「日常礼拝している財産」
非課税財産の代表的な例は墓地や墓石などでしょう。仏壇や仏具、神棚などの宗教的な財産も非課税とされています。
ただし、ここで重要なポイントは「日常的に礼拝をしているもの」という点です。
毎日とはいわなくとも、法事などの際に実際にお参りするようなものと考えれば良いでしょう。
ただし、骨とう的価値があるものなど、投資の対象や商品として所有している場合は相続税がかかります。
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠
厳密には相続財産とは異なりますが、被相続人が亡くなったことで受け取れる死亡保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」と呼ばれ、相続税の対象です。
ただし一定の金額までは、非課税枠が設けられています。非課税とされるのは、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までです。
国や地方公共団体などへの寄附
国や地方公共団体に対して寄附した財産も非課税とされます。保険金や死亡退職金など、相続とみなされる財産を寄附した場合も対象です。
公益法人への寄附
相続財産を寄附するケースでは国や地方公共団体だけでなく、公益法人や特定非営利活動法人などに対する寄附も非課税です。
ただし非課税対象とされる法人には条件があり、租税特別措置法第70条第1項に規定される法人だけに限られています。
非課税財産は相続財産から控除できる
相続財産のうち、墓地や墓石などの非課税財産は遺産の総額から差し引くことができます。
国などに寄附したお金も同様です。寄附した金額が財産から差し引かれた上で、基礎控除額などを踏まえて相続税が計算されます。
これらの非課税財産は「遺産の総額から差し引かれる」と考えればよいだけなので、さほど難しくはないでしょう。
妻と子を残して亡くなったAさんには、5,000万円の遺産があったとします。
通常であれば相続財産の総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた金額が課税対象です。
5,000万円‐(3,000+600万円×2)=800万円
Aさんは長く地元で商売をしていたため、感謝の気持ちから「自分が亡くなったら500万円を自治体に寄附したい」と考えていました。
実際に500万円が寄附された場合には、この金額も控除することができるのです。
5,000万円‐(3,000+600万円×2)‐500万円=300万円
この場合、相続税が課される対象額は300万円となります。
注意が必要なのは、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠です。
非課税枠はともに「500万円×法定相続人の数」ですが、相続人が受け取った場合でなければ非課税にはなりません。
具体的に見てみましょう。
妻と子を残して亡くなったAさんの生命保険金が1,000万円あったとします。この場合の非課税枠は1,000万円です。
500万円×2=1,000万円
配偶者も子も法定相続人に当たるため、受取人が妻か子供のどちらかであれば非課税枠がそのまま適用されます。
1,000万円-1,000万円=0
課税対象額が0のため、相続税はかかりません。
しかし、Aさんの孫を保険金の受取人にしていた場合、非課税枠は適用されず1,000万円全額に相続税が掛かります。
またAさんには負債も多かったため、妻と子は相続放棄をしたとします。相続放棄をした人も保険金を受け取ることはできますが、非課税枠は適用されません。
非課税財産による相続税の節税対策
非課税財産というもの自体は分かりましたが、実際にどのように節税につなげたらいいのでしょう?
考え方としては、「そのままでは課税される財産を非課税財産に換えておく」ということです。
お墓を生前に現金購入する
墓地や墓石などは相続発生後に購入したものに限られません。生前に購入したものであっても非課税財産とされるため、相続税はかかりません。
現金として所有したまま亡くなった場合には相続税の課税対象ですが、仮にそのうち200万円の現金で墓地や墓石を生前に購入していたら、200万円分を課税財産から非課税財産に換えたことになります。
生命保険金の非課税枠は受取人が1人でもOK
さきほど生命保険金を受け取る場合の計算方法を説明しましたが、非課税枠の算出に用いるのはあくまでも「法定相続人の数」であって、受取人の人数は影響しません。
例え受取人が1人でも、法定相続人が2人であれば1,000万円、3人であれば1,500万円の非課税枠が適用されます。
非課税枠が大きければ、現金という資産を「一時払いの生命保険」(保険契約時に全契約期間の保険料を一括で支払う生命保険)に換えるという手法も効果的です。
相続税の非課税財産に関する注意点
非課税とされるには、さまざまな条件があるケースも少なくありません。主な注意点を確認しておきましょう。
墓地や墓石の支払いは済ませておく
墓地や墓石をローンで購入した場合には注意しましょう。
「支払い対象の資産が非課税だから、その分の負債を計上しない」というのは当然といえば当然の話ですが、せっかくの非課税財産がローンの残高と相殺され、節税効果が少なくなる結果となってしまいます。
寄附は条件を満たさないと非課税財産にならない
公益法人などに対する寄附については、「寄附を受けた側はその財産を2年以内に公益目的の事業に使わなくてはならない」という厳格なルールがあります。
この要件を満たさない場合には非課税にならないことには注意が必要です。
寄附を受ける側の都合についてもすり合わせが必要になりますから、事前に税理士などの専門家を交えて相談をすることが望ましいでしょう。
生命保険金・死亡退職金の非課税枠は法定相続人のみ
生命保険金・死亡退職金の非課税枠が利用できるのは「法定相続人が受け取った場合」に限られます。
「孫が保険金を受け取った」など、相続権のない人の場合は非課税とはなりません。
さきほど保険金は「厳密には相続財産ではない」と述べましたが、相続よりもむしろ遺贈に近いお金の授受と言え、相続放棄をした人も受け取ることができます。
しかし相続放棄をした人が受け取った場合も、非課税とはなりませんので注意が必要です。
不動産や株の寄附は譲渡所得に課税される
寄附する財産が不動産や株など、評価額に変動があるものの場合にはさらに注意が必要!
これらの資産は寄附時の時価で譲渡があったものとみなされるため、取得した時よりも価値が上がっていた場合には所得税が課されます。
これらの寄附が公益上のメリットが大きいと認められる場合には非課税とする制度も設けられていますが、別途の手続きが必要となることを覚えておきましょう。
非課税財産の判断は慎重にしよう
「課税される財産を非課税財産に換える」という相続税の節税対策は、考え方としては非常にシンプルです。
しかし、非課税とされるにはさまざまな条件があるケースも少なくありません。
あまりにも高額な寄附で課税財産が極端に少なくなるような場合は、非課税と認められない可能性も生じます。
非課税財産の活用を考えるのであれば、税理士などの専門家に相談をした上で慎重に判断するのが望ましいでしょう。