贈与税

贈与税ルールの解説|生活費や教育費の援助ってどうなるの?

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税金の考え方では「あくまでもお金を稼いだ個人の財産を、無償で他人に贈れば贈与になる」というのが原則です。

しかし、子供の生活費や教育費を親が支出していることは贈与に該当するのでしょうか。

冒頭の考え方を額面通りに受け取れば、贈与に該当し贈与税を払わなければならないのではないかという疑問が生じます。

しかしながら、贈与税は「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」については非課税とされる規定があるのです。

少し難しい言い回しのこのルールを、具体例を交えて詳しく解説していきます。

生活費の援助に贈与税はかからない

父親が働いて家族の生活費を稼いでいる家庭は少なくないでしょうし、そもそも子供の生活費を親が出しているのは普通で、これまで贈与税なんて払ったことはありません。これって脱税なんでしょうか?

その心配はありません。夫婦間や親子間など、扶養する義務を負う人が生活費や教育費を常識的な金額で負担した場合には非課税とされているのです。詳しく説明していきましょう。

扶養義務者からの贈与

養育する義務を負う親が子供の生活費の支出をするケースのように、扶養義務者が通常の生活で必要と認められる範囲で支出した生活費や教育費などには贈与税はかかりません。

親子間だけでなく、夫婦や兄弟などでも「扶養義務者からの贈与」であれば同様です。

ただし、非課税となるのは生活費や教育費として必要なときに都度支出するものに限られます。

仮に「大学に進学する子供に4年分の生活費を一括して送金しよう」と考えた場合、先々の資金として子供が預金したお金は課税対象となってしまう点には注意が必要です。

生活費・教育の範囲

生活費

生活費とは、住居費や食費、光熱費など日常生活に必要な費用を指し、治療費や子育てに関する費用なども含まれます。一方の教育費は、学費や教材費、文具費などが当たります。

生活費・教育費の名目で贈与したとしても、別の支出に転用したような場合には贈与税がかかることも覚えておきましょう。

例えば「仕送りでもらったお金で株を買った」などの場合には、生活費とは認められず贈与税がかかります。

生活費として非課税になる具体例

生活費といっても、それぞれの家庭環境で生活費に対する認識は違うと思いますが…

では、どのような項目が生活費として認められるのか、具体例を挙げてみていきましょう。

仕送り・家賃など

扶養義務者が生活費や教育費を支出しても税金がかからない仕組みは、何も同居の家族だけとは規定されていません。

例えば親元を離れて一人暮らしで学生生活を送る子供がいるのであれば、生活費を仕送りすることも子どもの家賃を負担することも通常の生活費の範囲内と認められるのです。

もちろん学費などを親が負担するのも問題ありません。

ただし、この場合でも通常必要と認められる金額に限られ、貯蓄などに回した場合は贈与と判断されます。

結婚費用・出産費用など

結婚や出産に要する費用も、比較的広範囲で非課税とされる使途が認められています。

結婚に関していえば、結婚式にかかる費用や新居に移るために必要な費用。

出産費用で言えば、通常の出産に関する分べん費や入院費、産後ケアに要する費用などのほか、不妊治療なども対象です。

また、産後の子供の医療費や予防接種などに必要なお金、保育園などに必要なお金も非課税対象です。

ただし、保険金などで補てんされるお金がある場合、その金額は対象外となることを覚えておきましょう。

教育費として非課税になる具体例

教育費に対する考え方も人それぞれだと思うのですが、この範囲はどうなっているのでしょう。教育にはしっかりとお金を掛けたいと思っているのですが…

教育費も「学校に支払うお金」だけでなく、広範な用途が認められます。

学校等に直接支払う費用・教材費など

教育費として最も分かりやすい資金は学校などに支払う授業料や入学金など、教育機関に対して直接支払う費用でしょう。施設費や入学試験に要する費用なども含まれます。

さらにテキストや学用品などの購入費用や給食費、通学費、修学旅行に要する費用など、「学ぶこと」に伴って発生する費用も教育費として認められます。

学習塾や習い事の費用など

学校だけに留まらず、学習塾や習い事などに要する費用も教育費です。

学習塾やそろばん塾などのような勉学に直結するものはもちろん、スポーツや芸術などに関する習い事も対象となります。

非課税対象例

具体的には、水泳教室や野球やサッカーなどのクラブ、ピアノ教室や絵画教室などが含まれ、これらで使う物品の購入に必要なお金も非課税対象です。

生活費を非課税にするときの注意点

贈与税の基本的な考え方は「家族であろうと贈与すれば税金がかかる」というのが原則で、生活費や教育費の非課税という仕組みは例外規定ともいえます。

生活費や教育費として非課税にする場合には、例外と認められるためのいくつかの注意点を押さえておかなければなりません。

必要な贈与を都度行った場合に限られる

生活費の贈与が非課税と認められるためには、「必要な都度」ということが重要なポイントです。

先ほども説明したように、例えばこれから4年間の大学生活を送る子供に対して、月々の生活費を毎月仕送りする分には課税対象とはなりませんが、4年分の生活費を一括して先に贈与した場合には非課税とはなりません。

使い切っていない場合には課税される

「必要な都度」と同様に、「必要な金額を」という点にも注意しましょう。

毎月定額を生活費として仕送りしていたとしても、贈られた人が使い切らずに預金として残っていたような場合には、その金額は課税対象となる贈与と判断される可能性があります。

生活を切り詰めて節約し、貯めたお金で嗜好品を買った場合など、通常の生活とは別の使途に充てたお金は、非課税とは認められません。

贈与された金銭の使途を明確にする

「必要な金額を」「必要な都度」というポイントを押さえるためには、贈与されたお金の使途を明確にしておくことが大切といえるでしょう。

例えば一人暮らしの住宅費や学校に支払う学費などに関しては、いったん子供に仕送りをしたお金から支払うよりも、親が直接支払った方が明確です。

このように、第三者から見て資金使途が分かりやすい形でお金を支出することが望ましいでしょう。

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活用できる生活費に関する贈与税の特例は?

生活費を非課税で贈与するには、基本的には「必要なお金を必要な都度」というのが原則です。

しかし、特定の目的に使う資金などに関しては特例制度が設けられています。それぞれの仕組みを見ていきましょう

教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与の特例

教育資金も「必要な金額を必要な都度」というのが原則ですが、特定の要件を満たせば1,500万円までが非課税とされる特例制度が設けられています。これが教育資金の一括贈与の特例です。

適用されるのは30歳未満の子や孫に対して直系尊属が教育資金を贈与した場合で、学習塾など学校以外にかかる費用に対しては500万円という制限が設けられています。

制度を利用するためには、受贈者を信託受益者とした信託契約を金融機関と結んで資金を管理するなど、定められた規定に従って運用することが必要です。

また、受贈者が30歳に達した時や贈与者が亡くなった時には、その時点での贈与額から一定のルールに基づいて計算した金額が贈与税や相続税の課税対象となる点にも注意しましょう。

結婚子育て資金贈与

特例制度の一例

親や祖父母などの直系尊属が、18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚や出産、子育てに要する資金を贈与した場合には結婚費用に関しては300万円、総額で1,000万円までが非課税となる特例制度があります。

ただしこの特例を受けるには、結婚・子育てに要する資金であることを特定し贈与金を管理する専用の口座を開設することや金融機関と信託契約を結んで資金を管理することなど、規定に基づいた特別な措置を取る必要があります。

令和5年3月31日までの時限措置のため、この期間内に手続きを取ることも必要です。

贈られた人が50歳に達した時点で、また贈った人が亡くなった場合にも、特例の効果は終了することも覚えておきましょう。

住宅取得等資金贈与

住宅取得等資金の贈与の特例

親や祖父母などの直系尊属から自己居住用の住宅を取得するために贈与を受けた場合、規定の条件を満たせば一定の金額まで贈与税が非課税となる制度が「住宅取得等資金の贈与の特例」です。

省エネ性能や耐震性能、バリアフリー性能など特定の基準を満たした住宅であれば1,000万円、それ以外の住宅であれば500万円までが非課税です。

基礎控除額110万円と合わせての利用が可能なため、最大で1,110万円までが非課税となります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度

暦年課税と呼ばれる一般的な贈与税の課税方式が1月1日〜12月31日の1年間に贈与された金額を基礎とするのに対し、複数年に渡る贈与を相続時に一括して清算する仕組みが相続時精算課税制度です。

ただし、この特例を利用するには条件が設けられており、60歳以上の親や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子または孫に対して贈与した場合に選択することができます。

贈与税が非課税となるのは最大で2,500万円。贈与者が亡くなったときに相続財産に加えて課税する制度です。

この制度を選択した場合には暦年課税に戻すことができず、対象となる贈与者からの贈与はすべて相続時に清算されることを覚えておきましょう。

贈与税に関するよくある質問

家族の間では頻繁に発生している「贈与」という行為。とはいえ、生活費などが非課税なのはあくまでも例外的な措置なのです。

思いがけないところで課税されることがないように、贈与税に関するよくある質問をチェックしておきましょう。

Q
贈与税がかからない生活費はいくらまで?

生活水準は人それぞれですから、国税庁も「いくら」という明確な基準を定めているわけではありません。

社会通念上で常識的な範囲の生活費であれば問題はないといえますが、それを大きく超える多額のお金を贈った場合には生活費とは認められない可能性があります。

基準がないからこそ、対策として資金使途を明確にしておくことが重要です。

また、例えば「学生でありながら起業して十分な資力がある」ケースのように、贈られる側が生活費を支援してもらうことに合理性が認められない場合も注意が必要です。

Q
生活費を証明する方法ってなにがある?

厳密に生活費を証明しようと思えば、日々の支出で領収書などを保管しておくことが最も効果的といえるでしょうが、現実的に実行している人はかなりの少数派でしょう。

通常の生活を送る分にはそこまで気にする必要はありませんが、例えば高額な支出が発生したようなケースでは領収書の保管なども必要でしょう。

例えばケガや病気で高額な医療費が掛かり、高額な仕送りが発生した場合。これが「生活に必要なお金」であることを証明するためには、病院に対する支払いの事実を第三者に示すことができる資料が欠かせません。

Q
親子間の現金贈与はバレる?

「例え生活費以上の贈与であっても、親子間でなおかつ現金で手渡しすればバレないのでは?」と考える人もいるでしょう。

確かに家族間でお金が移動しただけならば、部外者には分からないのではないかと思いがちです。

しかし税務調査では、口座の取引履歴などを含めて個人の資産の状況を細かくチェックすることができるのです。

贈与した人が亡くなって相続が発生したとき、贈与された人がマイホームのような大きな買い物をしたときなど、お金の動きについて注目されるタイミングは誰しも必ずあります。

贈与してすぐにはバレないかもしれませんが、いずれは露見するものです。

贈与税の申告をしていなければ、ペナルティとして追徴課税の対象になることも覚えておきましょう。

生活費の贈与税まとめ

「家族のお金は家族の共有財産」という考え方も珍しくはないですが、贈与税を理解する際に最も重要なポイントは「個人単位で所有者を考える」という原則です。

例え家族間であっても財産を無償であげれば贈与に相当することをしっかり認識したうえで、「生活費や教育費は例外的に認められている」と考えましょう。

仮に「これをあげたら贈与税がかかるかな?」と不安を感じるような場合であれば、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
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