贈与税

負担付贈与の贈与税と譲渡所得税について徹底解説します!

hdxsk630@yahoo.co.jp

普段の生活ではあまり耳にすることのない「負担付贈与」という言葉。

これは、一方が何らかの財産を贈与するのと引き換えに、受贈者が何らかの債務を負担することを条件とする契約行為を指します。

しかし、単なる贈与とは税法上の扱いが大きく異なる部分が存在するのが負担付贈与です。

この記事では、後から気付いて税負担が大きくなることがないように、負担付贈与の贈与税と譲渡所得税について詳しく解説します。

負担付贈与とは?

負担付贈与

単純に一方が財産を無償で提供する「贈与」という行為と異なり、贈られる側が何らかの債務を負担することを条件とする契約行為を負担付贈与と呼びます。

引き換えの給付が存在するため、贈った側にも何らかの利益が生じる契約行為です。

通常の贈与との違い

単純な「贈与」との相違点は、贈られる側が何らかの債務を負担することを条件とすることです。

言葉からはいま一つピンとこない人も多いかもしれませんが「ローン残債の支払いを条件に住宅を贈与する」「親の介護を条件に現金を贈与する」などを想像すると分かりやすいでしょう。

贈った側にも金銭やサービスという利益が生じるのが負担付贈与の特徴です。

あわせて読みたい
【贈与契約書】生前贈与の現金手渡しはOK?税務署に否認されない対処法
【贈与契約書】生前贈与の現金手渡しはOK?税務署に否認されない対処法

負担付贈与の具体例

「債務の負担」といっても、その対象となるものはさまざまです。有形・無形かも問いません。

事例

「市場に流通させれば2,000万円の価値がある土地を親から子に贈与する代わりに、住宅ローンの残債1,000万円を贈られた子どもが負担する」というケースは負担付贈与の代表的な事例です。

このほかにも「土地を贈与する代わりに、その一部を無償で使わせてもらう」「自動車を贈与する代わりに、毎日勤務先に送迎してもらう」などの条件を付した契約も、負担付贈与に該当します。

負担付贈与の課税内容

通常の贈与と同様に、受贈者には受け取った財産に応じた贈与税を支払う義務が生じます。

ただし、一定の債務を負担することから、負担する債務の価値を贈られた財産の価値から差し引くことが可能です。

一方で、受贈者が負担する債務は贈与者にとっての利益と考えられることから、そこで得られる利益に対して譲渡所得税や住民税が課せられる場合があることに注意しましょう。

贈与者に譲渡所得税や住民税が発生する場合もあるので注意が必要です。

負担付贈与にかかる税金は?

負担付贈与では、贈られる側の贈与税だけでなく、贈与者にも譲渡所得税や住民税などが課せられる可能性があります。

場合によっては売買などの取引による譲渡よりも税額が高くなる恐れも生じるため、細心の注意が必要です。

しっかりシミュレーションして対策することが大切ですね。

贈与税の計算方法

負担付贈与の受贈者に課せられる贈与税は、贈られた財産の価値から負担する債務の価値を除いた純粋な利益部分に課される仕組みです。

例えば前述の市価2,000万円の土地をもらう代わりに残債1,000万円のローンを支払うケースでは、2,000万円から1,000万円を差し引いた1,000万円が受贈者が無償で得た利益に相当し、贈与税の課税対象となります。

贈与税には累進課税が採用されており、高額になればなるほど税率が高くなるのが特徴です。

また、親や祖父母から18歳以上の子どもへ贈与した場合(特例贈与財産)と、それ以外の場合(一般贈与財産)では適用される税率が異なり、特例贈与財産の方が低い税率が適用されます。

贈与者に譲渡所得税・住民税がかかる場合もある

贈与者に譲渡所得税・住民税が課せられるのは、受贈者が負担する債務によって何らかの利益が得られる可能性があるためです。

先に挙げた土地の例で、購入時の価格が500万円だったと仮定してみましょう。

贈与者は1,000万円のローン負担が免除されるという利益を得ているため、ここから購入時に要した500万円を差し引いて500万円の譲渡所得が発生したとみなされます。つまり、この金額が課税対象です。

税率は所有期間に応じて異なり、5年を境に短期と長期に分けられます。

長期譲渡所得であれば、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%で、合計20.315%の税金がかかる計算です。

負担付贈与のメリット

贈られる側だけでなく、贈る側にも利益が生じる負担付贈与。うまく使えば、相続税対策としても有効に機能させることが可能です。

負担付贈与のメリットを見てみましょう。

ローンや介護などの負担をしてもらえる

一方だけが利益を享受するのではなく、贈る側にも利益が生じることが負担付贈与の最大のメリットです。

贈与の条件とする負担は、金銭の提供だけに留まらず、役務の提供や代替物の使用許可などさまざまなものが考えられます。

さらに「贈与者が定年退職したら」「受贈者が大学に合格したら」など、確定・不確定にかかわらず条件を設定することも可能です。

契約を解除することもできる

負担付贈与は単なる贈与とは異なり、契約の当事者双方に履行すべき義務が生じる「双務契約」と呼ばれる契約行為の一種です。

一方、受贈者には何の債務も生じない単純な贈与は「片務契約」と呼ばれます。

双務契約は双方が債務を履行しないと成立しない性質の契約であるため、「一方の履行があるまでは他方は債務の履行を拒むことができる」のが特徴です。

一旦合意に至ったものであっても、契約を解除することができます。

負担付贈与のデメリット

一方で、負担付贈与を行うことによって生じるデメリットも少なからず存在します。特に不動産の贈与では税額が大きくなるリスクも生じるため、一層の注意が必要です。

予想外の税金が発生する場合がある

負担付贈与では、受贈者には贈与税が、贈与者には譲渡所得税・住民税が課せられる可能性があります。

特に、一般的な贈与では発生しない「贈る側の税金」には注意する必要があるでしょう。

例えば不動産の譲渡所得税では、所有期間が5年を超える長期譲渡所得と5年以下の短期譲渡所得で税率が異なり、長期譲渡所得では20.315%、短期譲渡所得では39.63%と非常に大きな差が設けられています。

上記のような知識がないと、予想外の税金が発生するリスクも!

贈与物によってトラブルになるリスクがある

贈与者と受贈者の双方に履行すべき義務が生じる負担付贈与では、贈与物や負担する債務に対する認識の齟齬がトラブルに発展するリスクを内包しています。

不動産を例に挙げてみましょう。

贈与の対象となったのが住宅で、ある程度の補修をしなければ住めない物件だと仮定します。

贈る側は現況のまま贈与することを前提に契約を交わし、贈られる側はすぐに住める状態であるとの認識で債務負担に合意しました。

上記の場合には、補修費用の負担をめぐるトラブルが発生する可能性が高いですよね。

負担付贈与を利用しないほうがよい場合は?

負担付贈与は単なる贈与とは税制上で異なる扱いを受けるため、必要な知識を持っていないと税負担が大きくなる可能性が生じます。

特に不動産の贈与に関しては、評価額の算出方法が異なることなどに注意が必要です。

高額な譲渡所得が発生する場合

負担付贈与では贈与者にも譲渡所得税が課せられる可能性があることを説明しましたが、負担付贈与では売買など他の方法による譲渡で適用される特例が利用できないケースがあることにも注意が必要です。

例えば本人が居住している住宅を売却した場合には、一定の要件を満たせば譲渡所得が最高3,000万円まで控除される特例が受けられますが、負担付贈与ではこのような特例は適用されないため、高額な譲渡所得が発生する場合には大きな税金の負担が生じます。

注意!一般的な贈与や売買などで適用される特例が負担付贈与では利用できないケースがあるので、慎重な検討が必要です。

高額な贈与税が発生する場合

一方の受贈者側の税負担も大きくなる可能性があります。これも不動産を例に挙げて見てみましょう。

通常の贈与では、不動産の価値判断は相続税路線価や固定資産税評価額に基づいて行われるため、市場価額の7〜8割程度に抑えられます。

しかし負担付贈与の場合には、前述の通り時価そのものを評価額として受贈者の利益が算出される仕組みです。

同一物件の贈与であっても、負担付贈与では納付すべき税金が高額になる可能性が高くなります。

負担付贈与に関するよくある質問

負担付贈与を検討する際には、メリットとデメリットをしっかりと把握することが不可欠です。

よくある質問を確認して、注意すべきポイントを押さえておきましょう。

Q
みなし贈与課税の対象になる場合って?

みなし贈与とは、贈与という言葉の本来の意味である「無償で財産を提供する」という行為ではないものの、実質的には一方が無償で利益を得ている事実を前提に贈与とみなされるケースを指します。

具体的には「市場価格よりも著しく低い金額で売却した」ような場合です。

ここでいう「著しく低い金額」の判断基準は相続税法上では定められていないため、個々の事案によって社会通念などから合理的に判定するとしています。

不安がある場合には、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

Q
口約束でも契約は成立する?

贈与契約は書面に残さなくても、双方が契約内容に合意すればよいため、いわゆる「口約束」でも契約は正当に成立します。

負担付贈与に関しても扱いは異なりません。口約束でも契約成立です。

しかし、贈与する側、贈られる側の双方に負担が生じる負担付贈与契約では、贈与財産とその条件とされる負担内容の認識に齟齬が生じたり、一方の債務不履行が発生したりするリスクが少なからず生じます。

このため、しっかりと契約書面を作成するのが望ましいでしょう。

Q
負担付贈与と負担付死因贈与の違いは?

死因贈与契約とは、贈与者の死亡によって初めて効力が発生する贈与契約のことを指します。

負担付贈与と負担付死因贈与では、この「死亡によって効力が発生する」という条件が付されていることが相違点です。

他の相続人とは異なる特定の財産を遺贈する代わりに、墓を建てて維持管理を担うというような契約がこれに当たります。

負担付死因贈与の場合、受贈者が債務を履行するか否かを贈与者が見届けることができないため、この役割を担う死因贈与執行者を任命することで履行を担保するのが望ましいでしょう。

負担付贈与を上手に活用して相続対策しよう

負担付贈与をうまく活用すれば相続税対策にもつながり、受贈者にも利益が生じる可能性があります。

しかし、他の契約行為では適用される減税の特例が利用できなくなるケースがあるため、利用する際には慎重な検討が必要です。

メリットとデメリットをしっかりと把握した上で、他の方法も比較検討して進めることをおすすめします。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
記事URLをコピーしました