贈与税

贈与税の土地評価額|考え方から計算方法まで基礎知識をまるっと解説

hdxsk630@yahoo.co.jp

住まいの新築などで、親から子へ土地の贈与を検討するケースなどもあるでしょう。

現金を贈与するケースと異なり、土地の贈与では「いくらを贈与した」と金額の判断をするのが難しいと考える人も少なくないはず。

土地の贈与では

  • 「住宅用かそれ以外か」
  • 「誰から誰への贈与か」

などによって、税金の額に大きな差が生じます。

土地の評価額の考え方から税金の計算方法まで、基本的な知識をしっかりと理解しておきましょう。

土地に贈与税がかかる場合とは?

子供が家を建てるのに自宅の土地を少し分けてやろうと思っているけれど、タダであげたら贈与税がかかるんですか?だったら安く売る形にすれば…

相場よりも極端に低い金額で売却したケースなども「贈与」とみなされる可能性があります。贈与税がかかる事例を順を追ってみていきましょう。

相場より著しく安価で購入

贈与ではなく売買で取引したとしても、購入価格が実際の市場価格より著しく低い場合は差額分を贈与したとみなされます。

一例

例えば市場に流通すれば2,000万円で売却が可能な土地を、自分の子供に対して1,000万円で売却したとすれば、差額の1,000万円を贈与しとみなされます。

購入費用を免除された

購入価格が著しく低い場合と同様に、購入費用を免除された場合もその免除額が贈与とみなされます。

一例

例えば2,000万円を分割して支払うものとして土地の売買契約を結んだものの、最終的に途中までしか支払わずに残りの支払いが免除されたケースでは、免除された費用が贈与額に相当すると判断されます。

仮に毎年の支払い額が基礎控除額の110万円以内であったとしても、支払予定であった残額を一括して贈与したとみなされる可能性が高いことにも注意しましょう。

共有名義で負担割合と異なる登記

共有名義で不動産を購入する場合には、出資額に応じて持ち分を決めるのが原則です。

一例

例えば住宅ローンの借入額と現金支出の合計額の夫婦間の分担は夫と妻で7対3の割合であるにも関わらず、持分割合を2分の1ずつとした場合、購入金額の20%相当額を夫から妻に贈与したとみなされます。

ローンだけでなく現金での支出も合わせて考えなければなりませんから、住宅資金を親から贈与された場合なども注意しましょう。

無償で名義変更

土地の所有者は登記で判断するのが原則です。

もちろん相続後に登記をしていないようなケースで現実の所有者が登記と異なる事例も散見されますが、今後は相続登記の義務化によってさらに厳格に運用されることとなるでしょう。

つまり、仮に利用の実態が変わっていなかったとしても、無償で所有権の登記を移転させれば贈与と判断されるのです。

あわせて読みたい
贈与税の土地評価額|考え方から計算方法まで基礎知識をまるっと解説
贈与税の土地評価額|考え方から計算方法まで基礎知識をまるっと解説

負担付贈与

負担付贈与

受贈者が一方的に利益を得る贈与と異なり、贈られた側が何らかの義務を負うのが負担付贈与です。

「土地を贈与するけれども、一部を駐車場として使わせてほしい」などがこれに当たります。

単純な贈与とは異なり贈った側にも利益が生じることから、受贈者の利益の価値から負担部分の価値を除いた部分が贈与とされます。

親が借地している土地の底地を子供が購入

土地を借りる権利のことを借地権といい、所有権などと同様にそれ自体が価値を持つ権利の一つです。

このため借地権自体も贈与や相続、売買などの対象となります。

親が借地している土地の底地(所有権)を子供が購入したケースでは、少し特殊な取り扱いがなされます。

借地権者である親から所有者である子供に対して地代(土地の賃借料)が支払われない場合には、親の所有していた借地権を子供に対して贈与したとみなされるのです。

子供が所有権を取得した後も親が借地権を持ち続ける場合には、税務署に対して「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出しなければなりません。

土地の贈与にかかる課税方式

贈与と判断される事例は分かったけれど、一括で税金を払えないかもしれない。税金を払うために土地を売るのは本末転倒だし…

確かにその可能性はありますね。でも安心してください。課税方式は単年で判断する暦年課税のほか、相続時精算課税という方法も選択できます。

暦年課税

暦年課税は、通常の課税方式と考えてよいでしょう。1月1日〜12月31日の1年間に贈与された資産の総額から、基礎控除額110万円を差し引いた額が課税対象となる仕組みです。

支払わなければならない贈与税が発生する場合には、翌年の2月1日〜3月15日に確定申告をしなければなりません。

相続時精算課税

相続時精算

相続時精算とは、60歳以上の親や祖父母などの直系尊属から、18歳以上の子または孫に対して贈与した場合に選択できる特例制度です。

最大で2,500万円までを複数年に渡って控除することができ、最終的に相続が発生した時に相続財産の一部に加えます。

ただし一旦この制度を選択すると、対象となる贈与者からの贈与はすべてこの制度が適用され、暦年課税に戻すことができなくなる点には注意が必要です。

土地の評価額はどう決まる?

現金と違って土地の価格は簡単には分かりませんよね?どうやって査定するのでしょう?

贈与と相続では、土地の価値を決める方法が異なります。贈与の場合は時価、つまり通常の取引価額で評価するのに対し、相続時は国税庁が決める路線価などをもとに算出します。

路線価方式

路線価方式

路線価方式は、その土地が面している道路ごとに1㎡当たりの単価を定めて土地の評価額を算出する方式です。数値は毎年見直しが行われ、7月に国税庁が公表しています。

単に「路線価」と呼ぶ場合も少なくないですが、贈与や相続で使用されるのは「相続税路線価」です。

固定資産税評価額の算出に用いる「固定資産税路線価」とは異なることを覚えておきましょう。相続税路線価は国税庁、固定資産税路線価は市町村が定めています。

路線価方式では、路線価をベースに土地の間口や奥行きなどに応じて補正した後、面積を乗じて計算します。

倍率方式

倍率方式

上記の路線価が定められていない地域で用いるのが倍率方式です。

倍率方式は先に述べた「固定資産税評価額」に、地域ごとに国税庁が定めた「倍率」を乗じて評価額を算出する方式です。

こちらも路線価と同様、毎年7月に国税庁が各地域の倍率を公表します。

土地の贈与税の計算方法

自宅の裏の土地を贈与したとしたら、実際にはいくらの税金がかかるのでしょうか?

贈与税は「誰から誰への贈与なのか」によっても金額が異なるのが特徴です。計算式を詳しく見てみましょう。

一般贈与財産と特例贈与財産

贈与税の算出に用いる税率には、

  • 一般贈与財産用の一般税率
  • 特例贈与財産用の特例税率

の二種類があります。

言葉の響きから贈与の対象物によって違うように聞こえますが、実際には「誰から誰への贈与なのか」によって異なります。

特例贈与財産は「直系尊属から子や孫への贈与」で、それ以外の贈与が一般贈与財産です。

特例贈与財産は一般贈与財産よりも税率が優遇されています。

贈与税額の計算方法

受贈者が1年間に受けた贈与の総額から基礎控除額110万円を除いた金額が課税価格となり、それに対して規定の税率を掛けて計算します。

仮に親から子へ1,000万円相当の土地を贈与した場合の計算式は以下の通りです。

1,000万円−110万円=890万円(課税対象額)

親から子への890万円の贈与であれば税率は30%、控除額は90万円です。

890万円×0.3-90万円=177万円

このケースでは、177万円の贈与税が課されることになります。

土地の贈与税が非課税になるケース

自宅を家族に譲るとなると、税金を避けることはできそうにないですね。

自己居住用の住宅を取得するなどのケースでは、大きな非課税枠を設けた特例なども用意されています。いくつかの制度を見てみましょう。

配偶者控除

結婚して20年以上の夫婦間で、自己居住用の住宅やその取得資金が贈与された場合、基礎控除額110万円に加えて最高2,000万円まで控除される特例が配偶者控除です。

贈与を受けた翌年の3月15日までに対象不動産に居住することや、その後も引き続き住む見込みであることなどが条件とされています。

なおこの特例は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用されません。

住宅取得等資金の非課税制度

自己居住用の住宅を購入した場合や増改築をした際に親や祖父母など直系尊属からの贈与を受けた場合には、一定の要件を満たすと贈与税が非課税となる特例制度があります。

省エネ性や耐震性など一定の要件を満たす住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合では500万円が非課税の限度額です。

直系尊属ですから、配偶者の親などの場合は要注意。非課税対象となる配偶者が共有持分を持たなければ適用されません。

贈与者が法人

贈与税は個人から個人への贈与に対して課される税金です。このため、贈った側が法人である場合などには贈与税は課されません。

ただしこの場合には財産をもらった個人が所得税や住民税の課税対象となります。税金自体がかからないわけではありませんから注意しましょう。

土地の贈与に関する注意点

土地の贈与では支払わなければならない税金の金額も大きくなりがちです。

贈与税以外の税の対象になる可能性もありますから、ポイントとなる項目を押さえておきましょう。

贈与税が非課税でも不動産取得税がかかる

特例などを利用して贈与税が非課税となった場合でも、贈与された人には不動産取得税がかかることを覚えておきましょう。

不動産取得税は、不動産を取得した人に対して課される税金で、購入の場合だけでなく贈与でも課税対象です。

税率は土地の評価額の3%、建物は住宅用の場合は3%、住宅以外の場合は4%とされています。

とはいえ、贈与された人が居住する住宅の場合には最大で1,200万円の控除があるほか、宅地の場合には固定資産評価額を2分の1で計算するなどの特例制度があります。

単に土地だけを贈与した場合には適用されないことにも注意が必要です。

相続の対象になる場合がある

相続時清算課税を利用していない限り、原則的に贈与は暦年課税の対象となります。しかし、贈与後に相続が発生した場合には取り扱いが異なることを覚えておきましょう。

相続時には過去3年以内の贈与は無かったものとされ、贈与した財産は相続財産に組み込まれます。

仮に相続税対策として生前贈与をしていたとしても、故人の財産とみなされるため注意が必要です。

ただし配偶者控除に関しては、相続財産とみなされることはありません。

住宅に関する贈与や相続は専門家の力を借りよう

不動産の贈与に関してはさまざまな特例措置が用意されているため、どの方法を用いるのが適しているかを判断するのは難しいのが実情です。

贈与する金額が大きいだけに、手続きを間違えて非課税の特例を利用できないことがあれば、多くの税金を課される可能性も否めません。

特例を利用した場合でも生前贈与よりも相続税の方がメリットがあるケースも考えられるため、税理士などの専門家に相談して判断することをおすすめします。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
記事URLをコピーしました