車の贈与税はバレる?税金が発生するケースと上手な譲り方
自動車といえば高額な資産の代表例ですので、これが贈与の対象となるのも珍しい話ではないでしょう。
特に「車が生活必需品」という地域などでは、親から子への自動車の贈与はよく聞く話です。
ただし、車という資産ももちろん贈与税の課税対象。贈与税の仕組みをしっかりと理解して、税金が課されない上手な譲り方を考えていきましょう。
車の贈与がバレるのはどうして?
単に家族の間で車をあげただけなら、税務署は把握できないと思うんだが…
確かにその時点ですぐに露見することはないかもしれませんが、いずれは絶対にバレると認識しておくのが正しいでしょう。
税務調査は毎年行われている
「税務調査」という言葉からどのような場面を想像するでしょうか?
脱税を疑われた企業などに対する特殊な調査を思い浮かべる人も少なくないかもしれませんが、実は税務調査は継続的に行われている業務の一つです。
税務署は個人の口座の取引状況なども金融機関に開示させる権限を持っていますから、大きなお金の出し入れなども事細かに把握することができます。
高額な資金援助は「お尋ね」がくる可能性がある
「お尋ね」とは、個人の資産などに対する税務署からの問い合わせのこと。不動産の売買など大きなお金が動く取引を行った後や、相続が発生した後などに届くことが多いです。
例えば不動産を購入した場合には、住宅ローンでの調達や貯蓄から捻出したお金のほか、親族からの援助などもあり得るでしょう。
このように、税務署が「高額な資金援助があったのでは?」という疑念を抱いたときに「お尋ね」が送られます。
もちろんこの質問には正確に答えなければなりません。
相続時には贈与の調査も実施される
個人の資産状況が最も詳しく調査されるタイミングの一つが相続が発生した時です。
この際、相続人への生前贈与が認められずに相続税の課税対象となったり、贈与税の未払いと判断されて追徴課税の対象となる可能性もあり得ます。
車の贈与で税金はどのようにかかる?
息子の就職祝いに車を買ってやろうと思っているけど、110万円までなら贈与税は掛からないよね?
110万円までなら基礎控除額の範囲内ですが、あくまでも贈られた側の総額で判断する点には注意が必要です。
車の評価額(価格)が110万円を超えると課税される
お金や車などを贈与した際に課税対象となるのは、それらの金額が贈与税の基礎控除額110万円を超えた場合です。
「就職祝いに100万円の車を買ってあげた」というケースでも、ほかにお祝い金などをくれた人がいれば、合計金額によっては課税対象となる可能性が生じます。
贈与税の計算方法
通常の贈与税の計算では、受け取った側の人の1年間(1月1日〜12月31日)の受贈額の総額を基準とします。これが暦年課税という贈与税の計算方法です。
仮に親から子へ200万円の車を贈った場合の計算式は以下の通りです。
200万円−110万円=90万円(課税対象額)
親から子への90万円の贈与であれば子の年齢に関係なく税率は10%です。
90万円×0.1=9万円(贈与税)
車の価値はどうやって決まる?
私が持っている車をあげるのと、新しい車を買ってあげるのではどっちがいいのだろう?
贈与税を考えるうえでは、車の評価額は『購入してあげる』のか『持っている車を譲る』のかで少し扱いが異なります。それぞれのケースを見てみましょう。
新車・中古車を購入する場合
新車にせよ中古車にせよ、「買ってあげる」場合は購入費用を現金で贈与したのと同じです。このため、購入に要する費用がそのまま贈与額として判断されます。
車両価格に加えて諸費用などにも注意することが必要です。
所有している車を譲る場合
一方、所有している車を贈与した場合には、その車の残存価値が贈与とした額と考えられます。一般的に考えられるのは買取価格です。
中古車買取店の査定やウェブサイトの一括査定サービスなどを利用して、提示された買取価格を書面で残しておくのが良いでしょう。
車の贈与税をかけない方法は?
私の暮らす地域では、日々の生活に車は欠かせない。できるだけ贈与税をかけずに車を譲りたいのですが…
それでは、贈与税がかからないようにする方法を見ていきましょう。
名義変更せずに貸す
最も簡単な方法で贈与税がかからないようにするには、所有権そのものを移す「贈与」という形を取らずに「貸す」という方法を取るのが良いでしょう。
あえて法律上の言葉を使うのであれば「使用貸借」という契約形態です。
例えば親の名義で購入した自動車を子どもが毎日自由に乗り回したとしても、所有者が親本人であれば贈与という行為自体が発生していません。
評価額が110万円以下になってから贈与する
走行距離や経年によって車の価値は下がっていきます。
基礎控除額以内の贈与であれば税金は掛かりませんから、評価額が110万円以下になってから贈与するのであれば非課税です。
また、購入した車をプレゼントする場合には購入に要する費用が贈与額とみなされる一方で、使用した車を贈るのであれば買取金額が評価額とされます。
評価額が下がるまで使用するのは、この点でも有利です。
車の贈与税に関するよくある質問
車の贈与でかしこく節税するためには、課税対象となるポイントを把握しておくことが不可欠です。
よくある質問から、注意点を解説します。
名義変更、つまり所有者を変更したことで贈与であることが明確な場合だからといって、必ずしも贈与税が発生するとは限りません。
贈った車の評価額が基礎控除額の110万円以内であれば問題ないのです。
また、扶養義務のある親子間で生活に必要な最低限の車を贈ったようなケースでは非課税になると考えられ、逆に資産価値が認められる高級車などをプレゼントした場合には贈与税が掛かる可能性が高くなるでしょう。
贈与した人・贈与された人の間柄によっても、贈与税の扱いは異なります。夫婦間と親子間では税率などに差異が生じることを覚えておきましょう。
親子間のような「直系尊属から子や孫への贈与」は、特例贈与財産として税率が優遇されています。
一方で夫婦間の贈与は一般贈与財産と呼ばれるもので、特例贈与財産の要件を満たさないため、親子間よりも贈与税が高くなる可能性が生じるのです。
税務署からの「お尋ね」が届くのは、「贈与があったかも」と疑われる行為から半年程度が経過したタイミングが多いようです。
例えば住宅の購入資金に贈与の可能性があると税務署が認識するのは、法務局から税務署に対して行われる土地・建物の所有権移転登記の通知に基づいています。
不動産の評価額に対して抵当権設定額(住宅ローンの借入金額)が著しく低いなど「お金の出どころが分からない」といった疑問が生じることで、お尋ねという手続きに着手するのです。
贈られた車が贈与税の課税対象にも関わらず税金を支払っていない場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。
申告期限までに申告しなかったケースでは、納付すべき税額が50万円までであれば15%、50万円超であれば20%の無申告加算税が課されます。
決められた期限までに納税しなかった場合には延滞税が、虚偽の申告など脱税を疑われるような不正行為があった場合には重加算税が課される可能性が生じることも知っておきましょう。
車の贈与税まとめ
贈与税という言葉からは「お金をあげること」を想像しがちではありますが、車を贈るのも贈与という行為の一種。
もちろん贈与税の課税対象となる可能性があります。
しかし、贈与税の仕組みや課税されるポイントをしっかりと理解して対策を講じれば、税金が課されることなく自動車を贈ることも可能です。
贈った後で慌てることのないよう、重要な注意点を確認しておきましょう。