贈与税

住宅資金贈与の非課税の特例|適用要件と申告するときの注意点まとめ

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住宅の購入や新築に充てる資金を親や祖父母などから贈与してもらった場合には、「住宅取得等資金の贈与の特例」と呼ばれる大きな非課税枠が設けられた減税制度が用意されています。

しかしこの制度は、適用を受けるための要件や手続きが少し難しく、一つ間違えると制度が利用できない危険性があります。

そこでこの記事では、適用要件と申告の際の注意点を詳しく解説します。しっかりと理解して、特例を最大限に活用しましょう。

住宅取得等資金贈与の特例とは?

子供がマイホームを購入するので、少し資金援助をしてあげようと思ってます。住宅取得資金の贈与の場合には贈与税がかからないと聞きましたが、本当でしょうか?

一定の要件を満たすと、最大1,000万円の贈与が非課税となります。これが住宅資金等贈与の特例と呼ばれる減税制度です。要件は非常に厳格ですから、一つ一つの項目を詳しく見ていきましょう。

最大1,000万円の贈与の非課税枠

住宅資金等贈与の特例

両親や祖父母など直系尊属から、自己居住用に住宅の新築や購入、または増改築などの資金を贈与された場合、一定の要件を満たすときは最大1,000万円の贈与が非課税となります。これが住宅資金等贈与の特例と呼ばれる減税制度です。

断熱等性能等級4以上、一次エネルギー消費量等級4以上、耐震等級2以上または免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上など特定の要件を満たした住宅の場合には1,000万円、それ以外の住宅の場合には500万円までの贈与が非課税とされ、暦年課税の基礎控除額110万円と併用することも可能です。

3年内加算の贈与税ルールも適用されない

贈与者が亡くなって相続が発生した場合、通常の贈与では相続発生から3年以内に行われた贈与はなかったものとみなされ、相続財産に加算される仕組みがあります。

このため、相続発生以前3年以内の贈与に関しては、例え基礎控除の範囲内などで贈与税が非課税だったとしても、相続税の算出の際には対象となってしまいます。

しかし住宅取得等資金の贈与の特例に関しては、3年以内に相続が発生しても有効とされており、相続税の課税対象とはなりません。

令和5年12月31日まで延長

住宅取得等資金の贈与の特例は令和5年12月31日までを期限とした時限措置として運用されています。

このため特例の適用を受けるためには、期間内に必要な手続きを行い翌年に確定申告をすることが必要です。

過去の税制改正で期間を延長する措置が取られていることもあり、令和6年以降も継続される可能性もあるでしょう。

とはいえ、延長に際して非課税の限度額が減額されている経緯もあることから、将来の運用に関しては不透明です。

制度を利用するのであれば、令和5年までに贈与を終える方向で検討することをおすすめします。

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住宅取得等資金贈与の特例を受けるための要件

大きなメリットがある制度ということはよく分かりました。減税を受けるために必要な条件などについても詳しく教えてください。

メリットが大きいだけに、適用の要件は少し難しく、かつ厳格です。注意して確認していきましょう。

受贈者についての要件

贈与を受ける側の要件は、贈与者の直系卑属(子供や孫)であることや贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上であることなどです。

特に、配偶者の親は直系尊属には該当しないことに注意しましょう。

実子でなくとも、養子縁組をしている場合は直系卑属に該当します。

また、贈与を受けた年の所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50平方㎡未満の住宅の場合は1,000万円以下)であることや、平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないことなども要件として規定されています。

住宅についての要件

対象となる住宅は、登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であることが求められます。

マンションなどでは専有面積が算定の対象となりますが、建築基準法上の床面積と登記簿上の床面積では計算の基準に差異があるため注意が必要です。

新築だけでなく中古住宅も対象となりますが、「昭和57年1月1日以後に建築されたもの」か「地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき一定の書類により証明されたもの」とする規定があり、つまり現在の耐震基準を満たすものでなければなりません。

住宅資金の贈与税を抑えるポイント

特例を最大限に活用して贈与税を抑えるためには、さらに覚えておきたいポイントが存在します。

贈与税の基本的な仕組みを踏まえて、もう少し詳しく解説していきましょう。

夫婦それぞれに特例を受けることも可能

非課税となるのは直系尊属に限られるため配偶者の親などは対象外ですが、夫婦それぞれが直系尊属から贈与を受けて特例を適用することは可能です。

この場合、購入資金として支出する金額に合わせて共有持分を設定することが大切です。

仮に夫が単独で住宅ローンを組むようなケースでも、妻が受けた贈与で支出する割合に合わせて妻も持分を持たなければなりません。

そうしなければ妻の分の贈与の特例が認められないばかりか、さらに妻から夫への贈与があったとみなされる恐れが生じます。

贈与税の非課税枠110万円でローン費用を負担してもらう

贈与税は通常、1月1日〜12月31日の1年間で贈られた側が受け取った財産の総額で判断します。この場合には110万円が基礎控除額とされており、110万円以下の贈与であれば税金はかかりません。

このため住宅ローンを利用してマイホームを購入した後でも、基礎控除の範囲内で住宅ローンの返済を援助する形であれば非課税となります。

ただし、毎年の贈与が110万円以内であったとしても、継続して贈与を続ければ「非課税額を超える贈与を分割して行っている」と判断される恐れがあるため注意が必要です。

親子間で金銭貸借すると贈与税はかからない

贈与税が課されるのはあくまでも贈与に限られますから、親が出したお金であっても貸借であれば非課税です。

ただし、いくら名目上が貸借であっても、実際に返済が行われなければ贈与とみなされる点には注意しましょう。

貸借の際には、金銭消費貸借契約書を作成して返済のルールを定め、契約に従って返済をすることが必要です。

住宅取得等資金贈与の注意点

住宅取得等資金の贈与の特例を利用するにあたっては、絶対に知っておかなければならない注意点がいくつかあります。

ちょっとした勘違いで高額な税を納めることにならないよう、しっかりと理解しておきましょう。

贈与税がゼロでも申告が必要

住宅取得等資金贈与の特例を利用するためには、限度額以内の贈与で納付する税金が発生しない場合も、確定申告は必須とされています。これは非常に大切なポイントです。

贈与税の申告期限は、贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日です。万が一申告を忘れてしまった場合、基礎控除額を除いた金額が贈与税の課税対象とされます。

「つい、うっかり」という申告忘れで高額な贈与税が課されることのないよう、十分な注意が必要です。

小規模宅地等の特例が使えない

将来的に親が亡くなった際、親が居住する住宅を子供に相続させるケースでは注意が必要です。

小規模宅地等の特例

被相続人が居住していた住宅の土地は相続税額を算出するにあたって、「330㎡を限度に評価の80%を減額する」という非常に効果の大きな減税制度があります。

これは「小規模宅地等の特例」と呼ばれる減税の仕組みで、自宅以外に相続財産がない場合などに相続税の支払いで住む場所を失うリスクを避けるために定められています。

相続する側にも厳格な要件が定められており、同居していない子供が対象となる場合は「自分自身や配偶者所有の家がない」ことが求められます。

住宅取得等資金贈与の特例を利用して子供が住宅を取得することで、小規模宅地等の特例が使用できなくなってしまいます。

土地だけを購入した場合は対象外

特例の対象となる贈与は、自己居住用の住宅を取得する場合に限られます。このため、土地だけを取得した場合は対象外です。

住宅の新築のために土地を先行して購入するケースは特例の対象とされますが、その場合は土地の取得から入居までの期間に注意しましょう。

原則として贈与を受けた翌年の3月15日までに対象の住宅に居住することが必要で、さらに12月31日までに居住していない場合は、特例の適用から除外され修正申告が必要となります。

父母それぞれから贈与を受けた場合は合算

非課税の限度額は受贈者、つまり贈られた人を基準に判断します。

両親や祖父母など複数人から贈与を受けた場合には、その金額の合計で贈与額を算出します。特例の限度額だけでなく、基礎控除額も同様です。

仮に父親から300万円、母親から300万円、祖父から300万円の援助を受けたとすると、受贈金額は900万円です。

一般の住宅であれば非課税限度額を超過しますので、贈与税の課税対象となります。

諸費用・家具・家電・引越し費用などは対象外

贈与されたお金はあくまでも住宅の取得や増改築などに使われるお金でなければなりません。

このため購入に要する諸費用や家具・家電、引越し費用などに支出した場合は対象外となります。

特に増改築で複数回の引越しや仮住まいが必要になるケースでは、所要資金の総額に対する諸費用の割合が高くなりがちですので注意しましょう。

増改築の場合「工事に要する費用が100万円以上」で、なおかつ工事費以外の用途は認められないことを覚えておきましょう。

現金贈与も税務署にはバレる

「現金で直接手渡しすればバレないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、贈与したにも関わらず無申告であれば必ず露見すると考えましょう。

住宅の取得のような高額な買い物の後は、税務調査の対象となりやすいタイミングといえます。

住宅の取得から数ヶ月後に「贈与のお尋ね」が届く可能性もあるでしょう。

税務署は銀行口座の取引履歴などを調査する権限を持つため、「親の口座から現金が引き出された事実」なども把握することが可能です。

住宅資金贈与は相続トラブルになる可能性がある

高額な資金贈与は、後々の相続トラブルに発展する可能性があることも心にとめておきましょう。

もちろん誰に対していくらの贈与をしようが本人の自由ですし、死亡後の財産の分配などについても遺言によって指定することが可能です。

しかし、配偶者や子供など特定の法定相続人には、遺言の内容に関わらず最低限の遺産の分配を保護する「遺留分」という制度があるように、遺族の生活を保護するなどの観点から、極端な分割割合を防ぐ仕組みが備わっています。

相続人に対する生前贈与についても、「相続財産を前渡しした」と考えるのが一般的です。

被相続人の意思で特定の人に多くの財産を残すことも可能ですが、将来のトラブルのリスクも考慮したほうがよいでしょう。

住宅取得資金贈与が失敗するケースとは?

確かに節税効果は高いけれど、手続きはしっかりやらなければなりませんね。ほかに注意点はありますか?

それでは参考に、失敗しやすい事例を確認しておきましょう。

年末近くの贈与は要注意

住宅取得資金贈与の特例は非常に大きな節税効果を持つだけに、それだけ制度の運用は厳格です。

贈与を受けた翌年の3月15日までに本人が居住を開始しなければなりませんから、年末近くの贈与には特に注意が必要といえるでしょう。

万が一引き渡しが遅延して居住開始が遅れた場合、制度の適用を受けられなくなってしまいます。

土地を先行して買う場合の贈与

住宅を購入する際には、資金の大半を必要とするのは引渡しの時点であるのが一般的です。

しかし土地を購入して住宅を新築する場合には、土地の所有権を取得する時点で土地代金を支払う必要性が生じます。

この時点では住宅ローンの利用にも制限があるケースが多く、贈与金を有効に活用できるタイミングともいえますが、「翌年3月15日までに居住開始」という要件についてしっかりと認識しておくことが不可欠です。

少しでもリスクがあるのであれば、つなぎ融資を利用するなどで贈与のタイミングを遅らせましょう。

必要書類取得に時間がかり申告遅れ

特例を受けるためには、受贈者や取得した住宅が要件に適合していることを示すさまざまな書類を用意する必要があります。

戸籍謄本や登記事項証明書など、官公庁で取得しなければならない書類も少なくありません。

特に本籍地を遠方に置いている場合は要注意。郵送で戸籍謄本を取得する場合、2週間程度の期間を見込んでおかなければなりません。

必要書類が揃わずに3月15日の申告期限に間に合わなければ、特例の適用は受けられません。

住宅資金の贈与は慎重に検討をすすめよう 

高額な資金を必要とするマイホームの購入では、親からの贈与は本人にとって大きな支援になるだけでなく、将来的な相続の際の節税につながる可能性もあります。

しかし、制度の仕組みは複雑で、専門的な知識を必要とする内容であることは間違いありません。

使い方を間違えれば納める税金が増えるリスクもありますから、税理士などの専門家に相談しながら慎重に検討することをおすすめします。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
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