贈与税

相続税の更正の請求とは?期限は?修正申告の違いと手続きの流れ

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相続税の申告期限は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」。

相続人の確認や財産の評価、そして遺産分割協議など、相続に必要とされる多くの手続きを考えると、決して長くはない期間です。

場合によっては、遺産総額を正確に評価できなかったり、遺産分割協議がまとまらなかったりといったケースも考えられるでしょう。

とはいえ、申告期限は待ってはくれません。「何とか間に合わせたけれど、結果的に相続税を払いすぎてしまった!」なんてことも起こり得ます。

そこで今回の記事では、払い過ぎた相続税を取り戻す「更正の請求」について、詳しく解説していきます!

相続税の更正の請求とは?

相続税の申告に誤りがあった場合に、「更正の請求」という手続きがあると聞きました。具体的にはどのような制度なのでしょうか?

相続税の更正とは、払いすぎてしまった税金を返還してもらう請求のことです。

単純な計算ミスによるものや、申告後に事情が変わって分割をやり直したなど、さまざまなケースが想定された手続きといえるでしょう。

納付した相続税を還付請求をする手続き

相続税の更正の請求

一旦納付した相続税が「払い過ぎ」であったことが分かり、余計に支払った税の還付を受けたい場合。そのようなケースで行う手続きが「相続税の更正の請求」です。

法律に基づいて行ったはずの計算に間違いがあった場合のほか、「申告後に遺産分割の割合が変わった」など、何らかの変化が生じたことによる請求も認められています。

相続税の更正の請求できる期限

相続税の更正の請求は、相続税の申告期限から5年以内であれば手続きが可能です。

申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」ですから、実質的にはおおむね5年10ヶ月の間ということになります。

ただし、特段の事情によって当初の納税額から変わってしまったケースの取り扱いは異なるため要注意!

事情が発生した翌日から4ヶ月以内、内容によっては2ヶ月以内に更正の請求を行わなければなりません。

ちなみにこのケースでは、「5年10ヶ月」という期間を過ぎていても請求が可能な一方で、それより前であっても4ヶ月以内に手続きをする必要があります。

相続税の更正の請求が発生するおもなケース

手続きの内容は理解できましたが、実際に「相続税の払い過ぎ」なんてことが起こり得るのでしょうか?

相続財産の算出には、極めて専門的な知識が必要です。不動産の評価額を過大に算出するなども起こり得るでしょう。

更正の請求が発生しがちなケースを説明します。

相続財産を過大評価されていた場合

最も単純な例は、相続財産を過大に評価した場合が考えられます。

相続財産は、現金のように価値が明確な財産だけとは限りません。評価額を算出しなければならない資産の代表例といえば、不動産が挙げられるでしょう。

土地の評価では、路線価方式や倍率方式という基本的なルールが定められてはいるものの、最終的には土地の形状や周囲環境などによっても大きく変わります。

申告期限内に正確な評価ができなかったことによって、過大な評価額で申告してしまうケースも十分に考えられるのです。

申告時に遺産分割がまとまっていない場合

相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」ですから、本来であればその時までに遺産分割を確定して申告しなければなりません。

しかし、遺産分割協議がまとまらないまま申告期限を迎える可能性も捨てきれません。

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とはいえ、申告期限を過ぎると延滞税などのペナルティが発生しますから、法定相続分に基づいた仮の相続税申告を済ませることがあり得ます。

このようなケースで、最終的にまとまった分割割合が法定相続分と異なっていれば、相続人によっては税の払い過ぎが生じるのです。

申告後に遺産分割がまとまり控除や特例が使える場合

法定相続分に基づく仮の相続税申告を行ったケースでは、未分割だった財産が正式に分割されたことにより、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの対象となる可能性もあります。

最初の申告の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば、これらの特例の適用を受けることができるのです。

特例の適用によって課税対象額が下がるのであれば、更正の請求の対象となります。

遺留分の侵害額が確定した場合

遺留分

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限受け取れる遺産の割合を定めたものです。

被相続人は、遺言によって法定相続分以外の割合で遺産を贈ることもできますし、相続人以外に財産を遺贈することも可能です。

しかし、自分の持つ遺留分に相当するだけの遺産を相続できなかった法定相続人は、「遺留分侵害額の請求」を行うことで、その遺産を取り戻すことができる仕組みとなっています。

この手続きが行われた場合、遺留分の返還によって受け取った資産の額が減少し、当初の相続税が払い過ぎになる可能性が生じるのです。

遺言書の発見・遺贈の放棄があった場合

遺言によって遺贈の意思を示していたケースでも、相続人が遺言書の存在を知らないままに遺産分割を終えてしまう可能性もあるでしょう。

相続税の申告を終えた後に遺言書が見つかった場合、遺言に従って遺産分割をやり直さなければなりません。

これとは逆に、遺贈の意思を示されていた受贈者が権利を放棄した場合にも、当初の申告とは異なる分割割合になるかもしれません。

このようなケースでも、相続税の過不足が生じることがあり得るのです。

相続人に異動があった場合

相続の際には、故人の出生の時まで戸籍をさかのぼり、相続人になり得る立場の人をもれなく探すという重要な手続きがあります。

しかし、遺産分割を終えた後になって、被相続人が認知していた子どもがいることが判明した場合はどうでしょう?

認知された子どもは法定相続人の立場ですから、遺産分割協議をやり直さなければなりません。

このほかにも、相続人の廃除や相続放棄の取り消しなどにより、申告した後に相続人が変更になる可能性があるのです。

このように相続人に異動があった場合も、相続税の額が変わる可能性があるため、更正請求の対象となります。

相続税の更正の請求手続きの流れ

相続税の更正の請求をする場合には、どのような手続きをすればよいのでしょうか?

必要書類などは国税庁のHPからダウンロードできますから、見本に従って作成すればよいでしょう。

このほか遺産分割協議書など、請求の理由を証明する書類などを用意する必要があります。

必要書類の準備

更正の請求に必要な書類は、国税庁のHPからダウンロードすることができます。

以下の3つの書類を用意しましょう。

  1. 相続税の更正の請求書
  2. 申告に係る課税価格、税額等及び更正の請求による課税価格、税額等
  3. 修正申告書

このほかに添付書類として、「更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類」が必要です。遺産分割協議書などがこれに当たります。

更正の請求

更正の請求は、上記の書類を納税地を所轄する税務署に提出して行います。e-Taxで提出することも可能です。

なお請求の際には、マイナンバーカードが必要となります。マイナンバーカードを持っていない場合には、通知カードと本人確認書類を持参しましょう。

税務署からの更正通知送達

必要書類の提出後、税務署で審査が行われます。審査に要する期間はおおむね2~3ヶ月です。

更正の請求が認められれば、税務署から「相続税の更正通知書」が送られます。

ここまで来れば必要な手続きは完了です。この後に「国税還付振込通知書」が届き、指定口座に還付金が振り込まれます。

更正の請求が認められなかったときは?

更正の請求をすれば、必ず納め過ぎた税金が戻ってくるのでしょうか?

いいえ、更正の請求は必ず認められるとは限りません。認められなかった場合の手続きについても説明しましょう。

国税不服申立制度を利用する

更正の請求は必ず認められるとは限りません。

更正が認められなかった場合に、その処分に対して不服があるときは、税務署長に対して「再調査の請求」を行うことができます。

再調査の結果になお納得がいかない場合には、さらに国税不服審判所長に対して「審査請求」をすることができる仕組みです。

また「再調査の請求」を経ることなく、直接国税不服審判所長に対する「審査請求」を行うことも可能となっています。

再調査の請求、もしくは国税不服審判所長に対して直接審査請求をする場合は、「処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内」に行わなければなりません。

再調査を経て審査請求をする場合には、調査結果が出てから1ヶ月以内に手続きをする必要があります。

税務訴訟を起こす

国税不服審判所長に対する審査請求の裁決を受け、なお処分に不服がある場合には、裁判所に訴訟を起こすことができます。

この場合、裁決の通知を受けた日の翌日から6ヶ月以内に申立てをすることが必要です。

なお、国税不服審判所長の裁決を受けた後か、もしくは審査請求から3ヶ月を経過しても裁決がない場合以外には、税務訴訟を起こすことはできません。

相続税の更正の請求に関するよくある質問

さらに相続税の更正の請求に関するよくある質問をチェックして、理解を深めておきましょう。

Q
更正の請求と修正申告の違いは?

更正の請求は「払い過ぎた相続税を還付してもらう」こと。一方の修正申告は、「相続税を少なく申告したとき」に行う手続きです。

修正申告に期限は設けられておらず、税務調査で更正を受けるまでであれば、いつでも申告することが可能です。

ただし、この場合には正規の税額に不足する金額を追加で納めなければならないほか、延滞税というペナルティが課されます。

Q
更正の請求は相続人ごとにする必要がある?

相続税の申告は「受け取った側」が行う手続きです。つまり、相続人や受贈者ごとに行う必要があります。

更正の請求も同様に、手続きが必要な相続人ごとに行わなければなりません。

Q
更正の請求をするときに相続人が死亡した場合は?

更正の請求を完了する前に、その相続人が亡くなった場合はどうなるのでしょう?

この場合であっても、更正の請求自体は可能です。しかし、本人は亡くなっているため、新たに相続人となった人が手続きをすることになります。

相続税の更正の請求まとめ  

相続税の更正の請求は法的に認められた相続人の権利ではありますが、「払いすぎても後から返してもらえる」と考えるのは得策とはいえません。

更正の請求が認められるのは、それが計算間違いによるものか、申告後に生じた事情によるものかに違いがあっても、あくまでも「法に基づいた税額が誤っている場合」に限られます。

例えば「特例によって軽減措置を受けられたはずなのに、特例を無視して申告してしまった」というようなケースでは、「本人の意思によって特例の適用を受けなかった」と判断されるため、更正が認められません。

「遺産分割協議がまとまらない」などの特段の事情がない限りは、更正の請求を念頭に置かず、正確な申告だけを考えた方がよいともいえます。

不明点などがある場合には、税理士などの専門家に相談しながら進めていきましょう。

ABOUT ME
山崎友也
山崎友也
代表取締役
株式会社トライパートナーズ 代表取締役
2011年から税理士紹介サービスを展開。多くの皆様に税理士を紹介してきました。
相続は何度も起こるものではありません。だからこそ正しい知識がないと、トラブルになる可能性を秘めています。大切なことは、徹底的に寄り添える相続専門の税理士に依頼すること。「頼んでよかった」と心から喜んでいただくことが私の生きがいです。まずはお話を聞かせてください。
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